木の力を引き出し、適材を適所に 【株式会社 小城六右衛門商店】

広島県の住宅関連データ(2018年)によると、木造の新設住宅着工数は住宅総戸数の約6割。木造の家は根強い人気があり、「温もり」や「安らぎ」を感じる人は多くいます。この木の持つ力について、大竹の老舗材木商、小城六右衛門商店の小城さんに聞きました。

会長
小城 林勲
代表取締役社長
小城 貴嗣

株式会社 小城六右衛門商店
所在地:広島県大竹市玖波2-7-3
1872(明治5)年創業。国産・外国産の材木卸および小売り、製材業を営む。木造住宅の保護に役立つ、世界の優良な住宅資材も取り扱う。従業員20人。会長は、公共建築物への木材活用を推進するために設立された広島西部木材振興協同組合の理事長も務める。

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住宅建材としての木材についてお聞かせください。

昭和40年代に入ると高度経済成長の波に押され、住宅の建築ラッシュが始まりました。この頃は、住宅といえば「木造住宅」が一般的。化粧材や構造材に使う樹種の選択(マツ、スギ、ヒノキなど)から始まり、多くは材木屋と大工の棟梁が直接相談して、手刻み加工で建てていました。必然的に、川下域(需要層)から川上(山林地域)への注文も活発で、山林経営の維持に必要な利益が確保できていたのです。
ところが外材が輸入され、大型製材工場の登場で大量生産によるコスト削減が始まると、国産材はついていけなくなり、材価も低迷。再植林などに十分な予算が保てず、山の機能維持を大きく見直さなければならなくなりました。

そんな状況を変えていこうとされているのですね?

製材工場の大型機械化や、プレカットと呼ばれる機械による加工などで、山に向かう材木屋の足も遠のき始めていました。それでも国産材を見捨てられず材木屋(川下)と林業家(川上)仲間で共通の課題について取り組む中で、「葉枯らし乾燥」という木の乾かし方があることを知ったのです。この乾燥法によって「木の力」の凄さに驚かされ、これはもっと意識的に皆さんに説明していかなければとの思いで、活動を始めました。
最近の地球規模での異常気象の克服には山の適切な管理が不可欠です。さらに、立春・立秋・新月・満月などと木は大きな関わりを持っていることを材木屋として学び直し、「木の力は地球を救う」という思いを共有して、一人ひとりが考えるようになりました。
旧佐伯郡の山を調査してみると立派なスギやマツがあり、あと10~20年もすればヒノキも豊富になることを知って、葉枯らし乾燥方法によるスギの製品を一部使ってきました。ただ伐採に時間がかかり商品も外材に比べて経費高で、また伐採職人の高齢化もあり、生産量の減少は余儀なくされています。
しかし、非住宅の建設現場では使用材積が多いので、公共事業の物件に地域材を利用することで山林地域の活性化を促進しようと、行政当局に働きかけています。

「葉枯らし乾燥」について、もう少し具体的に教えてください。

「葉枯らし乾燥」とは、伐採した木をすぐには搬出せず、葉を付けたまま山中で乾燥させる方法です。10月頃から翌年3月頃までの間、山の木は樹幹にある水分が最も少ない時にあたり、この間に伐採された木は、自らの力と判断で樹幹の水分を減らしたり、葉による光合成で水分蒸発が活発になる機能を持っています。したがって、この時期に葉を付けたまま伐採された木の葉は、半年もすると樹幹にあった水分が減少し始め、葉の光合成機能も減退し、緑色から枯れた状態の茶色に変化していきます。
この乾燥方法は九州や紀州あたりだけでなく、佐伯郡の山の一部でも実際に行われていました。木は一本一本、保有する精油の量や水分の量が異なります。山で伐採された時、自然の力によって木それぞれの能力に頼ることで、逆に均一化された乾燥材に仕上げられていくのです。

「葉枯らし乾燥」/葉枯らし乾燥のあとに自然乾燥

それぞれの木の力を上手に利用するために、適した場所がありますか?

一例ですが、ヒノキは強度があって硬く、防腐・防虫機能に優れています。シロアリに強いので、土台や柱、梁などの構造材に向いています。スギの心材(赤身の部分)は湿気に強く腐りにくいため、台所や浴室などの水周りに適しています。また香りに鎮静効果があり、内装材や化粧材として使われることが多いです。クスノキは防臭・防腐効果があり、トイレにも適しています。モミの木は、抗菌作用があり防臭効果も高いため、床材に向いています。また弾力があるので転んでも怪我しにくく、お年寄りやお子さんのおられる住宅におすすめです。ただ日本の生産量は少なく、ドイツのシュバルツバルト「黒の森」の天然更新されている木を使用します。

国産材だけでなく外国産も扱われるのですね。

地域によって土壌や気候は違いますから、住宅建築の際、可能であればその地域で育った材木を使うのが自然だとは思います。ですが、木の成長や構造上のスパン、費用などを考えると、地元材だけでは供給に限界があります。そのため地元材以外では、県産材のほか国内全域、ひいては世界中の木材から本当に良いものを見極め、工務店さんのニーズにお応えしたいと思います。
また木造の家を守るための資材も、納得のできるものを世界中から取り入れています。現在は、植物油から作られた自然塗料や、調湿性、放熱・蓄熱性が高く、強い殺菌作用を持つスペイン漆喰などを扱っていますが、ほかにも良いものがあればご紹介していきます。

自然塗料(osmoカラー)